下院は17日深夜に年金改革法案の審議を終了した。法案は続いて3月2日より上院で審議される。
政府は同法案を緊急審理案件に指定。この場合は、審議期間が制限され、下院と上院の審議は1回までに制限される。下院の審議期間は17日までに設定されており、その期間終了を以て審議は打ち切られた。野党側が修正案を乱発したこともあり、定年年限を62才から64才へ引き上げる旨を定める第7条は採決されないままで審議が終了した。上院においては、もとの政府提案の法案に戻して、政府が任意に修正案を追加したバージョンが審議の対象になる。
下院審議においては、野党の左派連合NUPESが多数の修正案を提出して審議に抵抗。審議妨害のみを目的とした修正案の提出には批判の声も上がり、NUPESに加わる政党は、主軸の左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を除いて修正案を取り下げた。これにより、NUPES内の足並みの乱れも露呈する格好になった。他方、保守野党「共和党」の内部でも、党のナンバー2を務めるプラディエ下院議員の行動が物議を醸し、シオティ党首が18日にプラディエ氏の役職を解く決定を下した。シオティ党首らは、早くから就労を開始した人に対する特例措置(拠出期間43年間を上限とする)の導入を取り付けることで年金改革法案の可決成立に協力する方針だが、プラディエ氏は政府に対する対決姿勢を崩さず、和を乱す存在となっていた。
上院では、共和党と中道勢力が過半数を握っており、法案の審議はより円滑に進むものと政府は期待している。上院審議を経て、両院協議会が3月13日頃に召集され、妥協案の策定がなされる。妥協案を上下院がそれぞれ採択すれば法案は可決成立する。連立与党と共和党の協力が確かなら法案は可決成立するが、造反組が出た場合には覆される可能性もある。一方、労組側は、法案の上院審議にあわせて3月7日(火)に抗議行動を行う予定で、一部労組は同日より無期限ストを開始する方針をちらつかせている。